B2. 低軌道衛星用 V/U アンテナ
1. ヤギから一体型クワッドへ
1) 144/430 共用ヤギ FOX727 最初のアンテナ

低軌道衛星の受信用に北辰 Maldol の 144/430 MHz 共用 HS-FOX727 (144MHz 3エレ/430MHz 5エレ) を仰角 30 度固定で使った。
VO-52 は良く聴こえ、FO-29 も弱いながらも受信できた。 ドップラーシフト、さらにはひどい QSB の様子が新鮮だった。 なんといっても衛星の速度、電波の速度が実感できるところがすばらしい。 しばらくは受信のみで十分満足していた。
ある日の夕方、上りオービットで具合の良い高度の VO-52 を受信していた。 どうみてもループテストに良い様子。 注意深く 435MHzで CW の短点を送ると、びっくりするほど明瞭な自局信号が 145 MHz で聴こえる。 帰ってきた短点は正確に送信と同期している。 ちゃんと衛星に届いて戻ってきた??!!!
後日の VO-52 夕方オービットで JG7 の局が CW でくり返し CQ sat を送っているのが聴こえた。 半信半疑であったがタイミングをはかって JK1SXR と送ると、あっさりと 599 と応答あり。 同様にこちらも最小限のレポート R 5NN TU を何事もなかったかのように送出。 これが3年前の話。当局衛星通信の始まり。
2) キュビカルクワッド
FOX727 のような簡単なアンテナでできるのならと2週間後には、144MHz は4エレ、435MHz は6エレのキュビカルクワッドを作り、軒先に突き出していた FOX727 と交代 (クワッドの製作データは HAM Journal No.113「キュビカルクワッドのすべて」 P39−45 記載データのとおり)。
これで地平線近くの衛星でも良く聴こえるようになったが、ビーム幅が狭くなったためか信号を見失うときがよくあった。 解決にはエレメント数を減らすしかないと思い144MHz を3エレに、435MHzを4/3エレに減らし、その各組み合わせを何回も製作し半年以上運用してみた。 写真はその途中のもの。
3) 145MHz, 435MHz一体型キュビカルクワッド
145MHz のアンテナの横に 435MHz の小さなアンテナというスタイルはどうもしっくりこない。 横幅もとる。 それで 145Mhz の中に 435Mhz を入れ子にしたタイプを作った。 性能がかなり悪くなるかと思ったがとくに差は感じなかった。 非常にコンパクトになったので気に入った。
衛星の姿勢、衛星バッテリーの状態、地上波の干渉とか良く分からないファクターが交信に大きく影響しているようで、実運用にたよるアンテナ性能の評価は時間をかけるしかない。 ともかく、145MHz/4エレ、3エレ、435Mhz/6エレ、4エレ、3エレの各組み合わで運用した。
4) ヤギ、145Mhz 5エレ

JAMSAT のサイトにもある「VHF/UHFのための安価なアンテナ」を参考に、145MHz を5エレ、435MHz を6エレを製作(オリジナルはWA5VJB)。 ”驚くべき性能”とのうたい文句につられて。
使ってみると QSB がいつになく激しい。 ツクツクボウシの泣き止む寸前の声のようなギューイイーーとかいう感じで衛星からの CW 符号が浮きつ沈みつ捻じ曲がるようなときが何回もある。 クワッドでの2年間の経験でもこれほどの QSB はなかった。 そういえば当初の FOX727 でもそうだったような。
もう一組直角に取り付け、いわゆるクロスヤギにすれば、回転偏波にも強くなるらしいが、このままでも、長さも幅もクワッドの倍以上あり、さらに直角にという気にならない。 それでこのヤギをあきらめクワッドに戻してしまった。 結局、このトライアルでは、低軌道衛星との通信にはヤギよりクワッドの方がよほど良いとの確信を得た。
5) 145MHz/3エレ-435MHz/3エレ クワッド スタック
一体型クワッドのスタックもやってみた。
方位ローテータのみの運用では垂直面のアンテナパターンは広いほうが助かる。 もちろんゲインも欲しいが、両者は両立しない。 解決策は、ゲインが低く、引きかえにパターンが広いアンテナ二組を横方向にスタックする、というもの。 これで縦方向のパターンはそのままで、ゲインがあがる、はず。 で、写真の 145MHz, 435MHz 双方3エレのものを二組作った。 使ってはみたが左右のスタック幅を狭くしすぎたため駄目だった。スタック幅を広くすればいいが、横の HF アンテナとの取り合いもある。
6) 現用キュビカルクワッド

結局は現在の 145MHz は3エレ、435MHz は6エレ共用クワッドに落ち着いた。 特に FO-29 に対してはアンテナパターン、ゲイン双方のバランスがとれており、コンパクトさもあり、これまでの集大成といったところ。
仰角30度固定でやっていたが、春先の強風続きのせいか、気が付けばほとんど水平近くまで頭が下がってしまっていた。 道理で北方向の地平線近くでロシアの局と交信しやすくなっていたわけだ。
予期せずに頭の下がったアンテナの DX への有効性をみて、アンテナ性能をフルに生かそうと仰角ローテータも取り付けた。 写真左は方位ローテータのみのとき、右が仰角ローテータ取り付け後。